所長の思い出 - 中風美術研究所 | 岐阜の美大・芸大受験予備校
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2017.08.09

所長の思い出

岐阜市上加納山の南斜面に設けられた広大な市営墓地に、ちょうど高校生だった夏のいまごろ、真夜中に仲間三人で出掛けた。風がビュウビュウ山から強く吹いてきて、何者かがぼくらが行くのを拒んでいる感じがした。でも、ぼくらは男子で、負けまいと広大な敷地に入ったとたん、風がぴたりと止まったんだ。
南の入口から見て、左手に斎場、右手に火葬場、その奥に広大な墓地。ぼくらは、まず、火葬場の正面に向かい、左から、その裏へと入っていった。火葬場の裏は、大きなダクトが走り、全く工場のよう。しかし、20メートル先の、いくつかある釜の裏側の一角が、暗闇の中で、確かに青白くぼーっと、光っていた。リンが燃えるように。三畳くらいの空間が、はかなげにぼーっと。チリチリって感じがした。
気持ちを残してこの世にまだいることを、知られたくなかったんだろう。
怖くなって三人とも無言で急いで斎場の敷地を出たら、結界から離れたのか、また、風がビュウビュウ吹きはじめた。
ぼくは、怖くて振り返らず、黙々と帰ったが、仲間の一人が振り返ってみたらしく、真夜中で、どの釜も遺体を焼いているはずはないのに、煙突から細く何かが、青白くたなびいたという。人のカタチのようにも見え、たなびく雲が、月明りを反射しただけかもしれない。
水道山は、表が伊奈波神社に代表される表信仰で、裏が鶯谷トンネルの南入り口から北東につながる上加納山の裏信仰。トンネルの南入口の真上あたりに、沢山の赤い鳥居が並んでいるのは、上加納山に昔から死んだ人たちの霊が集まるから、水道山を越えて、金華方面、城下町に来ないよう、結界がはられているのだが、少し前までは、大雨があると必ず道が水没した。水場には霊が集まる。そんな、鶯谷トンネルの話はまたいつか。

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