悪友ドクターX - 中風美術研究所 | 岐阜の美大・芸大受験予備校
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2019.11.26

悪友ドクターX

素描3

悪友ドクターX

中風明世はドクターXで高名な脚本家、林誠人に殺された。高校時代の悪友である彼は、サスペンスドラマの被害者の取り巻きに、性格も作品も評判が悪く、いつも金に困っている自称画家の中風明世を登場させた。東京・銀座のど真ん中で個展をするには金がかかる。その金をどこで得たか、という線で容疑がかかる。その個展シーンのロケを銀座でやって「悪ふざけに本当の中風の作品も飾ろう」と言う。そこには疑問を感じ、ディレクターにネットで僕の作品を検索してもらうように提案したら、すぐさま返事があり「すまんが中風の作品は茶の間の人には、何が何だか分からないってさ。美術部が描くよ」。「やはり」と僕。
「中風」は真犯人をケチな金欲しさにゆすって殺されるのだが、僕の作品が、まずは初見で理解されない、いわゆる今までの価値観に無いことが誇りの僕には、テレビのディレクターに褒められなかったことに満足した。いくら美しくて素晴らしいものでも、初めて見る時は、感動よりも困惑を伴う。さらに、それを素描するスリルと興奮は、第一発見者にしか味わえない。しかもそこは未開の地なので、皆から遠く離れ、独りで開墾するしかない。収穫の保証はない。
時はあらゆる瞬間を過去とし、人類による世界創生の物語は先端科学の発見によって、あっという間に置き去りにされる。そこで、今では2メートル近い作品を描く場合でも、僕は素描はしない。いきなりライブ感覚で画面に張り付く。エクリチュール(書法)はいつも零度で、「今」を射抜くように「自分」でも分からない「自分」を描く。

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