Blog講評会。O君の油絵。 - 中風美術研究所 | 岐阜の美大・芸大受験予備校
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2017.11.09

Blog講評会。O君の油絵。

美大や芸大の入学試験において、洋画、油絵専攻志望者は、短時間に油絵を描きます。十数年前までは、学校によってはきちんとした写実に基づいた作品を描くことが主流でしたが、今は、絵画の可能性を広く捉え、さまざまなスタイルの作品が認められています。では、何を以て採点するのでしょうか。このO君の油絵を見て、どう思われますか。教室内風景を描いています。

※人物を描いている・・・。

そうです。人物を描いています。絵は二次元に描かれたイリュージョンです。いかに、モチーフの存在感を高めていくか、が、レオナルド・ダ・ヴィンチ以降、セザンヌ、ピカソまでの美術史の流れです。われわれ専門家にとっては、一点の視座のレオナルドより、複数点の視座のセザンヌのほうに、より存在感を感じますし、立体を展開してしまったピカソの圧倒力はさらにターボがかかったようです。

とはいえ、実際には、現在、自然科学はさまざまな謎を解いてきた分、イタチごっこのように、さらにその先の謎が増えたのみで、私たちの存在の謎が解けるどころか、全ての知の総和を、レオナルドの時代のようにたった一人の天才の脳では受け止められるはずがありません。

そうした混沌としてはいるけれど、しかし、どうしてこの作品は美しいのでしょうか。自分も含めたこの世界における対象と、それを取り巻く空間の混沌を愛情を以て受け入れ、作者の気持ちを、色と形に変換し、懐かしくも祝いでいると思います。

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