建築家のI先生と、シェ・ドームという名の喫茶店で、豊田市美術館で昨日まで展示をしていたジャコメッティについて熱く話し込んでいた。ジャコメッティが、人体の形を肉眼をたよりにサーベイする行為の結果としての作品は、ぼくのようなプロとして歩いてきたつもりの画家が他者に良く見せるために、技術を鍛錬するようなしてやったり感がなく、ますます本物と偽物との違いについて、いろいろな方向に話は飛んでいく。例えば、まわりに自分の他誰もいない池に向かって平たい小石を横投げで投げて、いくつも水面を跳ねる水紋をみつめ、音を聞いて楽しんだのだが、自分だけの心の在り様子としての行為なので、誰にも教えるつもりもない、という「秘すれば花なり」のようなパフォーマンスの画像、しかも後ろから写した動画がなぜあるのか。
本物ぶりをしながら、表層の色気しか感じない偽物から、どうにかして本物になるために、と、I先生が若い頃になさっていた行為をぼくにも勧めてくださった。
まず、毎日長良川に行って、今日はこれが美しいという石を一つ、選んで連れてきなさい。
と、自分にとっての美しさを感じる感性を実在する形で鍛える事ができるだろう。と。
喫茶店シェ・ドームは、アール・ヌーヴォーといえばガラス作家のエミール・ガレ、ではないほうの、ちょっと通好みのシェ・ドームさんの名前をつけていて、店内にあるアンティックな品々は本物。レプリカではない、というこれまた本物通の喫茶店なので、アートの話をする雰囲気がとっておきです。で、一時間あまりアートの話をI先生として、溝旗公園脇、溝旗保育園のコンクリート塀にそって、落ちていた石。
なんとも、すぐFBにあげてしまって「秘すれば花なり」でもなんでもないですね。
美しいかどうかわかりませんが、ぼくにとっては可愛い形です。